8資産均等型の投資信託がダメな理由をおしえて!
バランスが良くて最強だという人もいるけど、結局どっち?
「投信ブロガーが選ぶ!Fund of the Year」で常に上位に名が上がる8資産均等型の投資信託。
とても人気がある一方で、「手を出したらダメ」「頭が悪い」「損なのでやめた」などと揶揄されることも多い金融商品です。
今回は、投資歴15年の個人投資家である筆者が8資産均等がダメな理由と最強な理由について自分なりの見解をまとめてみたいと思います。
▼本記事の内容
・そもそも8資産均等型とは?
・8資産均等がダメな理由と最強な理由
・8資産均等がおすすめなのはこんな人
ご紹介内容はあくまで個人の見解と運用実績であり、正確性や安全性を保障するものではありません。また情報提供のみを目的としており、投資、法務、税務その他のアドバイスを意図しているわけでもありません。当サイトに掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。詳細はこちら
8資産均等がダメな理由
8資産均等型とは、日本を含む世界各国の株式、債券およびリートなど、8つの資産に均等に投資することができるインデックス型の投資信託のことです。
ここでは、8資産均等型の投資信託の中でも人気の「eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)」を元に、8資産均等がダメと言われる理由を整理してみましょう。
市場規模が小さい資産の比率が高すぎる
8資産均等型がダメと言われるいちばんの理由は、市場規模が小さい資産の比率が高すぎるというものです。
引用:交付目論見書|eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)
8資産均等型は、8つの資産に12.5%ずつ投資されているため、一見、バランスがよく見えます。しかし、その市場規模(時価総額)の大きさは全く違います。
市場規模が大きい「株式」と小さい「リート」を比較すると、その差は約48倍。
【時価総額】
国内株式:約729兆円
国内リート:約15.5兆円
うわぁ…48倍はすごい…
時価総額が全く違うにも関わらず、組み入れ割合は同じ12.5%なので、時価総額の違いが考慮されていないことについて「頭が悪い投資法だ」と揶揄されているのです。
時価総額だけじゃなく、銘柄数で比べても違和感があります。
先進国株式は1,300程度の銘柄が含まれるのに対し、国内REITの銘柄数は100以下です。
同じ割合で組み入れると、世界的な大企業のアップルやマイクロソフトに日本国内のリート銘柄(J-REIT)の影響力が並んでしまうため、たしかにアンバランスだという意見も一理あります。
実際に、「eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)」の組み入れ銘柄の上位を見てみると、以下のとおり。
組入上位銘柄 | 種類 | 国・地域 | 比率 |
---|---|---|---|
TAIWAN SEMICONDUCTOR MANUFAC | 株式 | 台湾 | 0.7% |
APPLE INC | 株式 | アメリカ | 0.6% |
MICROSOFT CORP | 株式 | アメリカ | 0.5% |
TENCENT HOLDINGS LTD | 株式 | 香港 | 0.5% |
BRAZIL-LTN 240101 | 債券 | ブラジル | 0.3% |
10.5 SOUTH AFRICA 261221 | 債券 | 南アフリカ | 0.2% |
BRAZIL-LTN 260101 | 債券 | ブラジル | 0.2% |
PROLOGIS INC リート | リート | アメリカ | 1.1% |
日本ビルファンド投資法人 リート | リート | 日本 | 0.8% |
EQUINIX INC | リート | アメリカ | 0.7% |
安定した値動きの国内REITやブラジル債券が、成長企業のアップルやマイクロソフトに並んでる、めずらしい光景です。
8資産均等型は、バランスよく見えますが、高リターンを目指すのにはあまり向かないファンドであるという点は注意が必要です。
低成長国比率が高すぎる
8資産均等型は、低成長国の比率が高すぎてしまうことも問題視されています。
8資産均等型は、地域分散を国内、国外、新興国の3つに分けているため、どうしても日本の割合が高くなります。
8資産均等型の組入上位通貨の比率を見ると、なんと日本が約40%を占めています。
組入上位通貨 | 比率 |
---|---|
円 | 37.8% |
アメリカドル | 25.7% |
ユーロ | 6.0% |
香港ドル | 3.0% |
中国元 | 2.5% |
ブラジルレアル | 1.9% |
イギリスポンド | 1.8% |
ニュー台湾ドル | 1.7% |
メキシコペソ | 1.7% |
インドルピー | 1.6% |
なのに、日本の経済成長率は右肩下がり。
アメリカなどの成長著しい先進国や今後が楽しみな新興国に比べると、期待するのは難しい状況です。
2023年の世界の時価総額ランキングトップ10は、1社を抜かしてすべて米国企業です。
企業 | 時価総額 |
---|---|
アップル | 2兆6,090億ドル |
マイクロソフト | 2兆1,460億ドル |
サウジ・アラビアン・オイル | 1兆8,931億ドル |
アルファベット | 1兆3,302億ドル |
アマゾン・ドットコム | 1兆584億ドル |
エヌビディア | 6,860億ドル |
バークシャー・ハサウェイ | 6,756億ドル |
テスラ | 6,564億ドル |
メタ・プラットフォームズ | 5,494億ドル |
ビザ | 4,753億ドル |
日本の成長に40%も投資するなら、人口増加による人材の確保や開発資金を多く使うことができるアメリカに少しでも多く投資したほうが、10年後、20年後の資産の伸びに期待できます。
分散投資は投資のセオリーですが、市場規模や時価総額を無視して単純に均等割りすることによって、一定のリスクが生じることには注意が必要かもしれません。
暴落に弱く、回復が遅い
8資産均等型がダメと言われるもう一つの理由は、暴落に弱く、回復が遅いこと。
分散投資している割に、回復までの期間が長いという残念なデータがあります。
そもそも分散投資は、リスクを最小限に抑え、リターンを確保するための投資法。
全く違う動きをする2つの金融商品に投資をしてはじめて、意味があります。
だから、2020年のコロナショックや2009年のリーマンショックのように、相場全体が一気にダメージを受けてしまう時は分散の意味がありません。
実際にコロナショック時の8資産均等型チャートとS&P500連動型のチャートを確認してみましょう。
8資産均等型がコロナショックから回復するまでにかかった時間は、約10カ月。一方、S&P500はコロナショックからの回復に約6カ月しかかかっていません。
暴落に対する強さは、確実にS&P500のほうが優秀です!
この原因は、8資産均等型には立ち戻りが早い先進国株式以外に、不動産や新興国株式が一定割合含まれていたため。
守りの資産の筆頭に挙げられる債券が、コロナショックから守ってくれたため下落率は少ないのですが、同時に回復力が足りていないことも浮き彫りになりました。
8資産均等型にもう少し回復力があればなぁ…。
\S&P500が気になる人は、こちらの記事を読んでみてね(*´▽`*)/
パフォーマンスは株式に劣る
8資産均等型がダメと言われるもう一つの理由は、株式のみの投資信託と比較するとパフォーマンスが落ちてしまうこと。
「eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)」と「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の年間収益率を比較してみると、以下のとおりです。
【年間収益率の推移】
年 | 8資産均等型 | S&P500 |
---|---|---|
2013年 | 28.2 | 60.4 |
2014年 | 18.4 | 31.7 |
2015年 | ー3.0 | 0.9 |
2016年 | 3.5 | 6.1 |
2017年 | 7.8 | 17.5 |
2018年 | -6.7 | ー7.7 |
2019年 | 16.3 | 30.5 |
2020年 | 1.0 | 10.3 |
2021年 | 16.0 | 44.5 |
2022年 | -4.7 | ー6.1 |
2023年 | 5.1 | 9.1 |
・2016年以前はベンチマークの年間収益率を表示
引用:交付目論見書|eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)
引用:交付目論見書|eMAXIS Slim バランス(S&P500)
2013年や2021年のような市場が大暴騰した時は、明らかにS&P500のほうがリターンが大きくなっています。
しかし、2018年や2022年のような大暴落期やヨコヨコ期はの下落率はそんなに大きく変わりません。
長期的に持ち続ければ、明らかにS&P500のほうが右肩上がりに増えていくことが予想できます。
さらに「eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)」と「eMAXIS Slim 全世界株式(3地域均等型)」のトータルリターンを比較してみましょう。
8資産均等型 | 3地域均等型 | |
---|---|---|
1ヶ月 | -2.26% | -2.88% |
3ヶ月 | -3.35% | -3.97% |
6ヶ月 | +4.45% | +9.29% |
1年 | +5.12% | +14.02% |
2年 | +2.54% | +5.93% |
3年 | +9.84% | +14.99% |
5年 | +6.80% | +10.73% |
「eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)」は、地域分散のほかにアセットクラス分散もされているため、マイナスリターンの時の下落は少なく安定しているものの、上昇局面のリターンはひかえめです。
一方、「eMAXIS Slim 全世界株式(3地域均等型)」は、国内、外国、新興国の3つの地域に分散されていますが、アセットクラスは全部株式。
そのせいで「eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)」と比較すると、長期的にはリターンが増えやすいという特徴があります。
地域分散はしたいけど、アセットクラスは株式に振りたい…という人に3地域均等型は人気です。
8資産均等型は債券の割合が多く、なかなか大きなリターンに繋がりにくいことが「頭が悪い」と言われてしまうゆえんです。
安全資産は実質25%のみ
8資産均等型がダメだと言われるのは、「分散性が高く安全だ」と言われながらも、大して安全資産が多く含まれているわけではありません。
もちろん株式100%の投資信託よりは安全資産は多いけど、安全なイメージだけが先行してしまっている感じがあります。
アセットクラスのうち、株式はもちろんREITも、値動きは激しく、安全資産とは言えません。
実質的な安全資産は債券のみで、さらに言えば新興国債券は値動きが大きく、デフォルトリスクも高いため、安全資産とはいいがたい存在です。
引用:交付目論見書|eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)
そうなると…安全資産は国内債券と先進国債券だけ…約25%です。意外と少ないかも…?
1本で全アセットクラスを網羅しているとはいえ、安全資産が多いわけではありません。
8資産均等型1本で行くとしたら、安全資産が多いわけではないこと、そしてそれなりにリスクが大きいことは認識しておくべきです。
信託報酬は最安ではない
8資産均等型は、低コストで広く分散投資が可能な商品ではありますが、そのコストは最安ではありません。
あくまで比較的安いよっていうだけ。笑
「eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)」と「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の信託報酬と総経費率を比較してみると、以下の通り。
8資産均等型 | S&P500 | |
---|---|---|
信託報酬 | 0.143%以内 | 0.09372%以内 |
総経費率 | 0.19% | 0.11% |
引用:交付目論見書|eMAXIS Slim バランス(S&P500)
S&P500連動型のインデックスファンドの信託報酬がどんどん値下がりしているので、それと比べると8資産均等型は決して安くはありません。
若い世代の資産形成には不向き
資産形成をするにあたり、まだ時間がたくさんある若い人と、時間が少ない中年から高齢者の戦略は、違ってあたりまえ。
資産を成長させる時間が30年以上とれる20代~30代は、多少リスクが高くても株式に投資をしたほうが資産を増やせる可能性があります。
一方、60代や70代は長期投資で資産が増えるまで待てない人も出てきます。
国民年金がもらえるのは、現状65歳からです。もう増やす時期ではなく、増やしたお金を守る時期に入る方も出てきます。
8資産均等型の投資信託は、長期的に高いリターンが狙える株式の割合が低く抑えられているため、せっかく時間がある若者の資産拡大チャンスの足を引っ張ってしまう可能性があります。
逆に、資産を守りたい中年以上の人、人生の資産構築をほぼ終え、目標にすでに達成している人にとっては、注目の商品であることは言うまでもありません。
\資産運用が気になる人は、こちらの記事を読んでみてね(*´▽`*)/
8資産均等が最強な理由
ダメな理由ばかりを見てきましたが、8資産均等型ファンドにももちろんメリットはあります。
8資産均等型ファンドは、ファンも多いです。最強だと言われる理由も見ていきましょう!
ポートフォリオの分散性が高い
8資産均等が最強といわれる理由は、ポートフォリオの分散性が高いことです。
8資産均等型のファンドがすごいのは、安定資産である債券にも40%投資しながら、きちんと毎年成長していける成長力を持っているところ。
もちろん株式だけのポートフォリオに比べたら、トータルリターンは少なくなりますが、暴落時の暴落割合が少なく抑えられるのは、債券を含んでいるおかげです。
暴落のダメージを少しでも抑えたい…という理由から、自分のポートフォリオに8資産均等型ファンドを組み入れる人もいます。
ちなみに、株式100%の投資信託を買いながら、自分で債券を別途購入する方法でももちろん大丈夫です。
リスクとリターンが平準化されている
8資産均等が最強といわれるもうひとつの理由は、とにかく平均点がとれること。
リターンがそこそこな分、リスクもそこそこで抑えられているというのが、8資産均等型ファンドの特徴です。
株式市場が不調でも、債券市場に助けられ、債券市場が不調でも不動産市場に助けられるため、結果的には平均点がとりやすい仕組みになっています。
さらに、地域分散も聴いていることから、国固有の経済状況や為替リスク、地域の紛争や地震などの自然災害など、予想できないアクシデントで被るリスクを最小限に抑えることができます。
プロのトレーダーだって、地域リスクの予想はできません…。
正直、8資産均等型のファンドで最大リターンを得るのは難しいですが、そこそこのリターンで満足できる人には、とてもおすすめのファンドです。
これ一本で長期分散積立が可能
8資産均等型のファンドは、これ一本で分散投資が可能という点で、最強と言わざるを得ません。
さらに、8資産均等型のファンドをNISAなどのつみたて投資枠で、長期積立していけば、地域・資産・時間のすべての分散が可能になります。
分散投資
∟時間分散
∟資産分散
∟アセットクラス分散=株式、債券、REIT、金など
∟地域分散=先進国、新興国、国内、外国など
8資産均等型は、安定運用に向いているため、NISA口座でも買うことができる対象ファンドになっています。
早期償還になるリスクは低い
投資信託を選ぶ時に実はとても重要なのが、純資産額です。
人気のない銘柄は、純資産額が上手く伸びず、途中で早期償還になるリスクがありますが、その点、eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)は、純資産額は十分に育っていて、さらに右肩上がりで増え続けています。
引用:eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)|マネックス証券
\資産運用が気になる人は、こちらの記事を読んでみてね(*´▽`*)/
【合わせて読みたい】資産3000万円を達成して感じた変化6選!精神的余裕は?考え方や価値観は?
8資産均等はダメ?最強?頭が悪い?個人的な見解は?
eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)は、比較的クセがわかりやすい商品だと思います。
いわゆる投資のセオリーである分散投資を徹底しているため、クセのない基本的な定番商品だと思いきや、市場規模を無視して均等に各アセットを配分していることで、冒険心も垣間見れます。
8資産均等は決して頭が悪い配分だとは思いませんし、「ダメ」とも思いません。
ただ、単純なようでいてクセがある商品なので、このクセをちゃんと理解&納得できる人じゃないと、時間が経った後に後悔してしまいそうです。
実際のところ、私自身は今現在、eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)への投資はしていません。
投資をしない理由は、以下のとおり。
・資産目標金額の1億6000万円に達するまでは、株式割合を高めたい
(債券の割合が40%弱になってしまうのは多すぎる)
・日本国内に現物不動産を持っているため、国内リートは持ちたくない
・今は米国株投資が楽しいので、日本株の割合が高いのもちょっと気になる。
・バランスファンドは悪いとは思わないが、各資産クラスのリスクや成績が見えにくくなるので、ちょっとニガテ
でも60歳以降の状況次第で債券を持ちたくなったり、現物不動産を売ることを考えたら、一部の資産を8資産均等型の投資信託に変更することを検討する可能性はあります。
8資産均等型は、人を選ぶ投資先だと思うんだよね…笑
8資産均等がおすすめの人は、以下のとおり。
資産を減らしたくない人・平均が好きな人
株式投資に興味がなくほったらかしたい人
逆に8資産均等がおすすめできない人はこんな人です。
リスクをとって資産を増やしたい人
20~30代の年が若い人
私は40代で決して若くはないのですが、まだまだ資産目標額までの道のりが遠いので、今すぐ8資産均等型のファンドに投資するつもりはありません。
資産をある程度守りながら増やしたい時期になったら、乗り換えを検討する可能性もありますが、実際のところ利益確定をしてまで移し替えるメリットは感じていないので…もし乗り換えるにしてもちょっと先のことになりそうだなと思っています。
\わたしの投資方針の詳細は、こちらの記事を読んでみてね(*´▽`*)/
【合わせて読みたい】
わたしの投資運用方針と資産目標
まとめ:8資産均等がダメな理由と最強な理由を解説!
eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)は、ダメでも最強でもありません。
市場規模は関係なしに、「国内株式」、「先進国株式」、「新興国株式」、「国内債権」、「先進国債権」、「新興国債権」、「国内REIT」、「外国REIT」の8つに均等に投資をするという、おもしろいコンセプトの商品です。
8資産均等がダメな理由として挙げられるのは、こちらの7つ。
そして、逆に8資産均等が最強だと思う方の理由として挙げられるのは、こちらの4つ。
結局のところ、どんな投資方針を持って投資をしているのか次第で、8資産均等型の好き嫌いは分かれます。
8資産均等型を選ぶにせよ、選ばないにせよ、自分の投資方針を明確にして、自分らしい銘柄を選択をしてみてください。
それでは今日もまめまめたのしい一日を。
\資産運用が気になる人は、こちらの記事を読んでみてね(*´▽`*)/