新NISAで買う銘柄は、S&P500だけでいい?
全突っ込みしても大丈夫?
投資の専門家が、口をそろえておすすめする「S&P500」。
「S&P500はいい指数」と言われ、S&P500だけから購入をはじめる投資初心者が増えているようです。
私も最初はS&P500だけでした。気持ちわかる!笑
今回は、私自身の投資経験も踏まえながら、S&P500だけでいいと言われる理由を徹底解説!
S&P500だけしか購入しない場合のデメリットや私が実際にしているリスク回避策をご紹介します。
▼本記事の内容
・新NISAや積立NISAの購入銘柄は、S&P500だけでいい?
・S&P500だけしか購入しない場合のデメリットは?
・S&P500だけだと怖いと感じる人ができる対策法は?
ご紹介内容はあくまで個人の見解と運用実績であり、正確性や安全性を保障するものではありません。また情報提供のみを目的としており、投資、法務、税務その他のアドバイスを意図しているわけでもありません。当サイトに掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。詳細はこちら
S&P500とは?わかりやすく解説
NISAなどで投資を始めると、いちばん最初に聞くであろう「S&P500」。
S&P500は、米国株式市場の代表的なインデックス指標を指した呼び名です。
S&P500
=米国大型企業500社の動向を表す最良の単一尺度として広く認められている株価指数
=米国株式市場の時価総額の約80%をカバー
アメリカの経済動向を観察したければ、S&P500を観察しろというぐらい、有名な経済指標で、多くの投資信託などの金融商品は、S&P500のパフォーマンスに連動するように設計されています。
S&P500の構成企業は?
S&P500の構成企業は、全部で500社。
エコノミストやアナリストから構成される指数委員会が定期的に厳しい審査を行い、継続的に成長していけるように組み入れ銘柄を入れ替えています。
・アメリカの企業であること
・時価総額が53億ドル以上であること
・浮動株が発行済株式総数の50%以上
・4四半期連続で黒字の利益を維持していること など
もちろん、セクター(業種)バランスを考慮して選定されるので、業種の偏りは大きくありません。
株式市場の専門家たちがプロの視点で米国の大型黒字企業を選定してくれているので、安定感があり、ファンが多い指数です。
2024年現在のセクター割合は、以下のとおり。
業種 | セクター割合 |
---|---|
情報技術 | 26.7% |
ヘルスケア | 14.2% |
一般消費財 | 11.8% |
金融 | 11.1% |
通信 | 8.8% |
資本財 | 8.0% |
生活必需品 | 6.8% |
エネルギー | 4.0% |
不動産 | 3.0% |
公共事業 | 2.9% |
素材 | 2.7% |
今は伸び盛りの情報技術が全体の1/4を占めています。
情報技術セクターの銘柄が成長性の高さをキープしてくれていることがわかります。
S&P500だけでいい理由(初心者投資家は特に)
実はわたしも米国株投資を始めたばかりのころは、S&P500連動型の投資信託だけでいいと思って、S&P500だけを購入していました。
S&P500だけでいいと言われる理由は、今や世界をけん引する経済大国であるアメリカを、引っ張っている500社にまるっと投資できるから。
審査の段階で赤字企業は落とされるので、成長性と安定性を兼ね備えた企業がそろっていることは言うまでもありません。
ほぼ同じ動きをする株を複数買って、分散投資できた気になっているぐらいなら、S&P500に連動するインデックスファンドに全突っ込みしたほうが、結果的にはリスクが低くなる可能性があります。
S&P500だけでいいと言われる理由は、以下のとおり。
・過去の実績・パフォーマンスがすごいから
・米国株は今後も長期的な経済成長が期待できるから
・S&P500だけでも分散投資効果があるから
・良い銘柄が生き残る仕組みを採用しているから
・投資コストが低く、効率的に投資できるから
・番外編:投資の神様バフェット氏も推奨しているから
一つずつ見ていきましょう。
過去の実績・パフォーマンスがすごいから
S&P500だけでいいと言われるいちばん大きな理由は、過去の実績・パフォーマンスがすごいからです。
さらにS&P500は起源が古く、1923年からデータが蓄積されているため、信頼性が高いというメリットも。
下のグラフは、これまでのS&P500と日経平均株価の推移です。
青がS&P500、黄色が日経平均株価です。
引用:Google Finance (2023年11月06日時点)
S&P500:2520%増 (1923年~)
日経平均株価:35%増 (1950年~)
すっ…すごすぎて、日経平均株価が見えない!笑
さらに、過去5年間(2018年~2023年)の推移も見てみましょう。
引用:Google Finance (2023年11月06日時点)
S&P500:56.72%増
日経平均株価:47.00%増
全世界的にダメージを受けた、2022年のコロナショック。
S&P500(米国)、日経平均株価(日本)ともに大きなダメージを受けていますが、米国は金融緩和によって、株価が急回復&急上昇。
そして、今も堅調に推移しています。
2020年 コロナショックで、株価下落
↓
2021年 金融緩和で、株価上昇
↓
2022年 金融引き締めで、株価下落
↓
2023年 リセッション予想をはねのけ、堅調に推移
S&P500がすごいのは、立ち直りの早さです。これまでにも何度も暴落しているのに、長期的にみると、ちゃんと成長し続けているのがすごい!
利回りもチェックしてみましょう。
以下は、インデックスファンド「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」と「eMAXIS Slim 国内株式(日経平均)」の近年のトータルリターンです。
S&P500 | 日経平均 | |
---|---|---|
1ヶ月 | -3.06% | -3.14% |
3ヶ月 | -3.25% | -6.28% |
6ヶ月 | +13.06% | +7.86% |
1年 | +9.20% | +14.07% |
2年 | +10.65% | +5.41% |
3年 | +23.20% | +12.31% |
5年 | +17.05% | +9.06% |
昔は、米国株の平均パフォーマンスは年率7%だと言われていました。
しかし、近年のアメリカの経済成長は著しく、平均パフォーマンスを優に超えるリターンをたたき出しています。
これはあくまで過去のデータで、将来の利回りを約束するものではありません。でも…やっぱりS&P500の利回りには目を見張るものがあります…!
米国株は今後も長期的な経済成長が期待できるから
アメリカは、これからも一時的な下落を繰り返しながら、長期的には経済的に成長していく…というのが、一般的な経済アナリスト達の見解です。
その根拠は、主に以下の3つ。
・堅調に推移するGDP
・人口増加
・金融政策
一つずつ見ていきましょう。
堅調に推移するGDP
GDPとは、国が作るモノやサービスの付加価値の総額のこと。
GDP=一定期間内に国内で新たに生み出されたモノやサービスの付加価値の総額
一般的には、株価とGDPは相関関係にあると言われています。
価値を作り出すことができれば、その価値を作り出している企業の価値も上がっていく…ということね。
世界4大会計事務所「Price waterhouse Coopers」が発表した、GDPの世界順位予測は以下のとおり。
2014 | 2030 | 2050 | |
---|---|---|---|
1位 | 中国 | 中国 | 中国 |
2位 | 米国 | 米国 | インド |
3位 | インド | インド | 米国 |
4位 | 日本 | 日本 | インドネシア |
5位 | ドイツ | インドネシア | ブラジル |
6位 | ロシア | ブラジル | メキシコ |
7位 | ブラジル | ロシア | 日本 |
8位 | フランス | ドイツ | ロシア |
9位 | インドネシア | メキシコ | ナイジェリア |
10位 | 英国 | 英国 | ドイツ |
中国や新興国が追い上げる中、30年後も米国はインドに抜かされる程度で、まだ上位をキープしています。
日本やドイツの下落と比較すると、米国のすごさがわかりますね。
人口増加
米国は、先進国の中ではめずらしく、人口がこれからも増加していく国のひとつです。
経済産業省が公開した資料によると、世界の人口の変化予想は、以下のとおり。
日本の人口が2100年までに半分になってしまう中、米国はほぼ変わらずに推移しています。
新興国の爆増には及ばないものの、アメリカって先進国の中ではかなりめずらしい、今後も発展が期待しやすい国なんです。
金融政策
コロナショックをきっかけに、米国が行う金融政策とそのスピード感は大きく注目されています。
コロナショック時の米国の対応は、以下のとおり。
2020年2月:コロナショックで、株価急落
↓
2020年3月:金融政策方針決定
・緊急で利下げを開始=お金を借りやすくすることで経済を活発化
・国債を買い上げ(量的緩和)=市場にお金を増やすことで経済を活性化
・様々な財政施策の実施=法人税減税、失業給付、融資の返済免除など
アメリカはとにかく決定が早いっ!!1か月以内に方針を決めて、すぐに対策をしたからこそ、コロナショックが長引かなかったのかも…?
今後、さまざまな新興国が世界市場に台頭してくることが予想できますが、暴落に見舞われた時、今回の米国と同じようなスピード感での対策が果たしてできるのか…。
米国がまだ長期的に伸びる、S&P500だけでも十分と思われる理由のひとつに、この金融政策のスピード感も注目されています。
コロナ後の株価の急な上昇は、コワいほどでした…。でも、米国なら暴落が来てもいつか回復できる!と思わせてくれました…!
S&P500だけでも分散投資効果があるから
S&P500だけでいいと言われる理由の3つ目は、S&P500だけでも分散投資効果があるからです。
S&P500は、アメリカの代表的な500銘柄の詰め合わせパックのようなもの。
採用されるには時価総額が82億ドル以上など、複数の条件を満たす必要があるだけでなく、セクターバランスも考慮されているため、米国株式市場全体に投資しているのとほぼ同じです。
S&P500(S&P500種指数)
=米国の取引所(ニューヨーク証券取引所・NASDAQ等)に上場する約500銘柄
=市場規模(時価総額が82億ドル以上)、流動性、業種バランス等を加味して厳選
=選定された企業を時価総額で加重平均し、指数化
同じく人気の指数、ナスダック100は、ハイテク・IT(情報技術)関連が中心!米国全部にまるっと投資したいなら、S&P500が良いと言われています。
世界に分散したい場合は、オルカンと呼ばれる「全世界株式・オールカントリー」を選ぶほうがより分散効果がありますが、実はオルカンの60%は米国株。
全世界株式とはいえ、米国株に偏っているので、米国株の将来に期待する人達の間では、S&P500のほうが人気があります。
逆にオルカンは、新興国も入っているので、新興国の伸びに期待する方に人気!
ただ、上手く伸びてくれない場合、新興国が全体の足をひっぱる可能性も高く、こればっかりは何が正解か、だれにもわかりません。
わたしは、もともと日本株メインで投資をしてて、やっぱり米国ってすごいなと思うことが多かったので、オルカンよりS&P500のほうが好き。
\枝豆の詳しい投資方針はこちらからどうぞ(*´▽`*)/
【合わせて読みたい】わたしの投資運用方針と資産目標
良い銘柄が生き残る仕組みを採用しているから
S&P500だけでいいと言われる理由の4つ目は、良い銘柄が生き残る仕組みを採用しているからです。
S&P500は、銘柄選定の段階で、かなり厳しい審査(リバランス)が行われることはご説明しました。
でも、それだけじゃないんです。
このリバランスを、なんと年に4回も行っているのです。
成長していく見込みがない銘柄は、どんどんはじき出されます。だからこそ、常に優等生銘柄がそろっている状態をキープできます。
個別株を自分で買うとなると、このリバランスを定期的に行うのがとても難しいです。
でも、S&P500に連動するファンドを買っておけば、ほっておいても年に4回は勝手に棚卸しをしてくれるため、ほったらかし投資になりそうな人にとっては、とても購入しやすく、S&P500だけでいいと言われる理由のひとつになっています。
倒産や経営不振のニュースをちゃんと追っていく自信のない人は、個別株を自分で買うより、S&P500をホールドするほうが長期的に高いリターンが期待できます。
S&P500は毎年、20社前後が入れ替わっています。日経平均株価の構成銘柄の変更は年に1~2社なので、他の商品と比べても管理状態は良好です。
投資コストが低く、効率的に投資できるから
S&P500だけでいいと言われる理由の5つ目は、投資コストが低く、効率的に投資できるからです。
S&P500に連動するインデックスファンドは、とても人気が高く、他の投資信託よりもかなり投資コストが低く抑えられています。
わたしが買い始めたころは、こんなに安くなかったので、近年の激安価格には脱帽です…!
S&P500に連動する投資信託のコストは、以下のとおり。
ファンド名 | eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) | SBI・V・S&P500 インデックス・ファンド |
運用会社 | 三菱UFJ | SBI |
申込手数料率 | 無料 | 無料 |
解約手数料率 | 無料 | 無料 |
信託財産留保額 | なし | なし |
信託報酬率 | 0.09372%以内 | 0.0938%程度 |
どちらもとても人気があるS&P500に連動する投資信託です。信託報酬もほぼ変わらないね…!
特に長期積立投資を検討している場合は、投資コストの低さは大きなメリットになります。
番外編:投資の神様バフェット氏が推奨しているから
投資はあくまで自己責任、そして、投資先は自分で考えて決めるものです。
なので、あくまで番外編!
実は、「迷うぐらいならS&P500だけでいい」という話がここまで一般化したのは、投資の神様と言われるウォーレンバフェット氏のあるエピソードにも関係があります。
彼が妻への遺言の中で、資産の90%をS&P500に連動するインデックスファンドに変えることを推奨したんですって。
そこから、バフェット氏は、投資のプロではない方が資産を積み立てていく場合において、S&P500を持つことを推奨している…と話題になりました。
その手紙の内容は、以下のとおり。
私から管財人へのアドバイスはこれ以上ないほどシンプルです。「10%の現金で米国短期債を買い、残る90%の現金でS&P500に連動する非常に低コストのインデックスファンドを買う」のが良いと思います。(私はバンガードのインデックスファンドを勧めます)。
この方針で運用された信託財産の長期間のパフォーマンスは多くの投資家と比べて優れたものになるでしょう-例えば高いコストでファンドマネージャーを雇っている年金基金や運用機関などよりも、です。
厳密にいえば、バフェット氏もS&P500だけでいいとは言っていないんですよね。笑
\S&P500が気になる人にはこの記事もおすすめ(*´▽`*)/
考察!S&P500を一本持ちするリスク&デメリット
いくらS&P500が成長性と安定性を兼ね備えていたとしても、一本持ちは不安…。でも不安は漠然としたもので、具体的なデメリットをちゃんと理解できているわけではないんだよね…。
そういう人、多いと思います。
わたしも投資初期はそうだった!笑
ここでは、S&P500を一本持ちする際に考えられるリスク&デメリットを一緒に整理してみましょう。
本当にS&P500だけで分散効果は十分か?
投資の世界には、「卵は一つのカゴに盛るな」という格言があります。
卵を違うカゴに1つずつ分けて入れておけば、大きなアクシデントが来てもすべての卵が一度に割れてしまうことはないという意味の言葉で、株式投資で分散投資の重要性を表しています。
S&P500は、1つの投資であっても500社に分散して投資をしていることになるため、個別株を1つ買うよりも分散性が高いと言えます。
でも、これで十分かというと、そうではありません。
自分の資産の分散性を高めるためには3つの方法があります。
地域分散=異なる地域に投資すること
時間分散=異なるタイミングで投資すること
資産分散=異なる資産に投資すること
S&P500に当てはめてみると…地域も資産も分散されているとは言えません。
地域分散=アメリカのみ
時間分散=投資方法による ※NISAのつみたて投資枠で積立投資をするなら分散できる
資産分散=株式のみ
もっと暴落に強いポートフォリオを作っていきたいのであれば、地域分散、時間分散、資産分散されるように他の商品も買い足して、割合を調整していく必要があります。
S&P500だけ投資している人も心配しないで。最初はだれもがここからスタートします。
アメリカ経済の影響を大きく受けるのは事実
前述したように、S&P500に連動する金融商品への投資をすると、その投資家はアメリカ経済の繁栄と逆境に直結したリスクを負います。
採用されている企業がすべてアメリカに本拠を置いていて、地域分散が効いていないからです。
例えば、アメリカが不況になると、アメリカの大企業500社の利益に連動するS&P500は、大きな打撃を受けます。この打撃が直接、私たちの投資ポートフォリオに悪影響を及ぼします。
米国経済がどんなに強いとしても、将来どうなるかはわかりません。
アメリカ経済の暴落の例として、近年の暴落事件の下落率と下落期間を見てみましょう。
事件 | 最安値 | 下落値 | 下落率 | 下落期間 |
---|---|---|---|---|
2000年 ITバブル崩壊 | 20,833 | 7,603 | -64% | 36ヶ月 |
2007年 リーマンショック | 18,295 | 6,994 | -62% | 15ヶ月 |
2015年 チャイナショック | 20,952 | 14,865 | -29% | 8か月 |
2020年 コロナショック | 23,807 | 16,358 | -31% | 1か月 |
救いなのは少しずつ暴落期間が短くなっていること。
もちろん次の暴落時にはもっと長い期間、株価が潜伏することもあり得るので、油断は禁物。
ただ、個人的に思うのは、ITやAIの普及により、事業全体のスピード感がアップしているのではないかということ。
経済のサイクルが早く回るようになってきている可能性はありそうです。
また、アメリカは世界全体の影響を受けるのもひとつの特徴。世界の地政学的な緊張や貿易摩擦などが理由の株価変動も考えられます。
投資家は大きな世界的な変動に備えて、より強固なポートフォリオを構築していくことが重要です。
景気後退の予兆「逆イールド」が続く今をどう考える?
現在は、アメリカの債券市場で、長期国債の利回りが短期国債利回りを下回る「逆イールド」が続いています。
逆イールド
=長期国債の利回りが短期国債利回りを下回ること
=解消されるころにリセッション(景気後退)がくると言われている
これが2022年に発生し、現在も継続。
2024年3月に逆イールド持続期間が過去最長になったことが報道されました。
米国債市場で、景気後退の予兆とされる長短利回り逆転(逆イールド)の持続期間が21日で過去最長になったことが分かった。ただ足元の米経済は底堅さを維持しており、景気後退の気配は見られない。
これまでになかった米国経済の大事件に多くの投資家は困惑し、不景気はしばらく訪れない派と正確な時期はわからないにしても、今後不景気は来る派に分かれ、議論を呼んでいます。
暴落を待ってからS&P500への投資を予定する人もいるみたい。私は待ち続けて資産拡大のチャンスを逃した経験があるので、このまま投資を継続する予定です。笑
でも…なぜ長期国債の利回りが短期国債利回りを下回ると不景気が来るの?
この場合、注目されるのは以下の2つの金利です。
短期金利=2年国債
長期金利=10年国債
もしお金を貸す立場だとして、「2年で返してほしい」場合と「10年で返してほしい」場合なら、10年のほうの金利を高くしたいはず。
そのお金は長期間使えないわけだから、メリットを多くしないと貸したくない…という発想です。
だから、一般的には長期金利のほうが高くなります。
しかし、逆イールドは2年間貸すほうが10年間貸すよりもメリットが多い状態。
明らかに何かがおかしい…笑
2年国債の金利は、アメリカの中央銀行である米連邦準備制度理事会(FRB)が決めています。
今回の逆イールドの発端は、コロナショックの大暴落。
コロナショックからの回復を目指して政府が金融緩和や財政対策を行いました。
すると、経済活動が思ったよりも早く回復し、モノやサービスの需要に対して供給が追い付かない事態に発展。
ちょうどそのころウクライナ侵攻などの影響もあり、モノやサービスの価格が急上昇しました。
そう、急激なインフレです。
インフレを押さえつけるため、米連邦準備制度理事会(FRB)は2022年から利上げ(金融引き締め)を行いました。
短期金利が下がったのはそういうわけだったのね…。
一方、10年国債の長期金利は、市場が決めます。
銀行は10年間お金を借りてくれる取引先に、金利とともに打診をします。
取引先は10年後の経済状況が暗く、設備投資をしても利益がでない(=借りたお金を回収できない)と予想する場合、お金をなかなか借りません。
お金を借りてくれる取引先が見つからない場合、銀行は10年国債の長期金利を下げるほかないのです。
10年後の米国経済を暗いと予想する人が多いと、長期金利が下がる傾向にあります。
逆イールド持続期間が過去最長になった今、S&P500への投資に全振りするのはリスクが高いと考える人がいてもおかしくありません。
S&P500はハイテク株に偏りすぎている?
S&P500の上位銘柄は、GAFAMと呼ばれるハイテク銘柄が占めています。
GAFAM
=Google、Amazon、Facebook、Apple、MicrosoftのS&P500の代表5銘柄
この5社のことをまとめて、GAFAM(がーふぁむ)って呼んでます。
たしかにS&P500からGAFAM(代表5銘柄)を引いたS&P495のリターンは、ほぼTOPIXと同レベルであり、S&P500のリターンは、そのほとんどをGAFAMがけん引しているのは事実。
S&P500-GAFAM(代表5銘柄)=S&P495
出典:S&P495で分かる ブーム化する「米国株投資」に隠れた歪み|ITmedia
時価総額で加重平均されているので、自然とGAFAMに引っ張られてしまってます…。
S&P500は、500社に分散できているとはいえ、実際はGAFAMへの依存度が高く、分散できているとはいえないのではと指摘する声もあるみたい…。
組み入れ上位銘柄 | 業種 | 比率 |
---|---|---|
Apple | テクノロジー | 7% |
Microsoft | ソフトウェア | 6.4% |
Amazon | 一般消費財・小売 | 2.7% |
Nvidia | 半導体 | 1.9% |
AlphabetA | メディア・娯楽 | 1.8% |
S&P500だけでは、セクター分散が十分ではないと考える投資家も少なくありません。
S&P500は大型株のリターンに頼りすぎている?
S&P500は、米国大企業500社に焦点をあてています。
中小型株までフォローすることができる全米株式インデックス系の投資信託と比較すると、S&P500だけでは急成長中の小型株や成長余地の大きい中型株に直接投資することができません。
S&P500は赤字企業は除外されるので、長期で黒字経営を続けていける安定企業がメイン。
これは逆に言えば、急激な成長をするような企業は除外されており、大規模な投資リターンを生み出す可能性が低くなることが考えらえます。
S&P500だけしか投資しない場合、ポートフォリオを安定的に成長する可能性が高まりますが、その一方で成長性が高い小型株のリターンを取りこぼしてしまうデメリットがあります。
S&P500だけだと不安な人と逆に物足りない人がいる
ここまで見ていると、S&P500だけに投資先を絞るのは不安になってきた…
実はS&P500だけだと不安な人と逆に物足りない人がいると思うの
誤解を恐れずに言えば、S&P500だけに投資をする場合、ハイテク銘柄の大型株への依存度が高くなる状況なのは事実です。
米国経済の暴落が心配な人は、このハイテク大型株に頼ってしまう状況を不安に思うでしょう。
しかしその一方で、米国経済はまだしばらく好景気が続くと考える人がいても不思議ではありません。
また、今現在は米国大型ハイテク株が世界をけん引していると言っても過言ではありません。
むしろ今がチャンスだと思っている投資家にとっては、ものすごいスピードで成長しているハイテク大型株の割合をもっと高めていきたい(=S&P500だけでは物足りない)と感じています。
どちらにしろ、S&P500は成長性と安定性のバランスがとても良い投資先。
S&P500だけではなく、S&P500をメインに据え、さらに自分の投資方針により近いポートフォリオに調整していくのがおすすめです。
例1:S&P500だけだと不安な人
メインの投資先(8割):S&P500
サブの投資先(2割):米国以外の先進国(日本など)ファンド、新興国ファンド、米国中小型株ファンドなど
例2:S&P500だけだと物足りない人
メインの投資先(6割):S&P500
サブの投資先(4割):ナスダック100などのハイテク重視のファンド、個別株など
枝豆のS&P500の運用実績と具体的なリスク回避策
株式投資歴15年の私は、S&P500だけに投資をするのではなく、他の投資信託や個別株、不動産などもミックスしています。
でも、こんな私も最初はS&P500だけで運用していた時代もありました。
コアサテライト運用が基本
私の株式投資方針は、コアサテライト運用が基本です。
コアサテライト運用
=投資運用戦略のひとつ
=安定的に運用する「コア」とリスクをとって積極的に高いリターンを目指す「サテライト」に分けてバランス運用を目指す
私の場合、コアの部分に据えているのが、S&P500。
新NISA枠のつみたて投資枠は、毎月10万円ずつS&P500連動型のeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)を購入し、今のところ2024年は100%、S&P500で埋める予定です。
そして、サテライトの部分にはナスダック100に連動する投資信託やインド株、個別株やビットコインなど、幅広く購入していますが、新NISA枠の成長投資枠に限ると、2024年は100%、ナスダック100に連動するニッセイNASDAQ100インデックスファンドで埋める予定です。
S&P500は金融資産の約40%
一般的には長期安定を目指す人ほど、コアの割合が高くなります。
長期安定型の場合 コア80%+サテライト20%
積極運用型の場合 コア50%+サテライト50%
私が積極運用を続けているのは、なるべく早く達成したい資産目標があるからです。
そのため、S&P500は全体のポートフォリオの約40%までに抑え、それ以外をナスダック100や個別株などに投資をしています。
これまでのS&P500の運用実績を公開!
ここ数年、米国経済は堅調で、S&P500もNASDAQ100も資産の拡大に貢献してくれています。
2021年から始めたNISA口座の運用実績は、以下のとおり。
評価損益合計:+1,377,392円
引用:マネックス証券
今のところ、米国金融市場の波に乗れていて順調です。
S&P500の10年後はどうなる?
S&P500がコロナ以降、とても調子がいいのはわかったけど、10年後はどうなるんだろう…
未来のことは誰にもわからないので、自分の投資先は自分で決めるしかないよ。…でも、参考になる専門家の意見をご紹介するね。
アメリカ経済の成長率は?
内閣府が発表した「世界経済の潮流」によると、世界全体の成長率は3%(2030年まで)だと言われています。
引用:世界経済の潮流|内閣府
日本もアメリカも大きな期待はされていません。笑
一方で、アジアの国々は2030年までの平均で、中国6.9%、インド4.1%が見込まれており、新興国の発展のほうが現経済大国よりも期待されていることがわかります。
S&P500は2030年代前半まで成長しない?
さらに、アメリカ経済の中でも大型株に限定したS&P500については、3%の成長も怪しいとみている投資家がいます。
シュティフェルのストラテジストとして有名な投資家のバリー・バニスター氏は、S&P500の成長に懐疑的です。
他の予測担当者が来年の米国株について一段と楽観的になる中でも、バニスター氏はS&P500種株価指数のインフレ調整後のリターンについて、リフレ的な経済成長を背景に2030年代初めまでほぼプラスマイナスゼロになるとの見方を強めている。
バリー・バニスター氏は、2024年の前半に4650まで上昇し、今後10年間は2023年のような大幅な上昇は期待できないと指摘しています。
コロナ以後の急上昇は考えられないとする専門家はとても多いです。未来のことは誰にもわからないですが、頭の片隅においておきリスク回避策を練っておくのは大事なことです。
買ってみよう!S&P500の投資方法と注意点
株式投資の最初の一歩としてS&P500だけへの投資から始めてみるのは悪いことではありません。
でも、S&P500だけだとリスクがあることも認識しておくべき。
S&P500への具体的な投資方法と注意点を整理してみましょう。
S&P500はインデックスファンド&NISAのつみたて投資枠で買う
投資初心者ならS&P500に連動するインデックスファンドをNISAのつみたて投資枠で購入することからはじめるといいと思います。
S&P500に連動するインデックスファンドは定番中の定番なので、多くのネット証券で購入が可能です。
・SBI証券
・楽天証券
・マネックス証券
・松井証券
・auカブコム証券 など
私が実際に買っているのは、以下のS&P500に連動したファンド。
・eMAXIS Slim米国株式(S&P500)
・SBI・V(バンガード)・S&P500インデックス・ファンド
S&P500に連動するインデックスファンドには多くの種類がありますが、なるべく信託報酬や総コストが低いファンドを購入しましょう。
手数料は毎日少しずつかかっていくコストなので、低ければ低いほどよいです。
投資時期や証券会社によって、手数料の最安値は変わっていくので、投資する段階でいちばん信託報酬が低いファンドを自分で調べてみてね。
\S&P500が気になる人にはこの記事もおすすめ(*´▽`*)/
S&P500は時間分散を効かせて買う
リスクは理解したし、とりあえずS&P500だけ買ってみる!でも、金融商品を買い足す以外にリスクを抑える方法はないの?
あるよあるよ!相場感に自信がない投資初心者は、つみたて投資で「時間分散」させるのがおすすめ。NISAのつみたて投資枠なら、設定だけすればOKでらくちんだよ。
投資の基本は、分散投資。
それも「資本分散」「地域分散」「時間分散」の3つを意識するのが重要です。
ただし、つみたてが必ずしも増えやすいというわけではないことも注意が必要。
「積立最強!!」みたいな考え方も、それはそれでリスクがあるよ。笑
米金融大手チャールズ・シュワブの金融研究センターが公開したデータによると、つみたて投資(ドルコスト平均法)よりも、年初一括投資のほうが資本が増えやすいことがわかりました。
このデータは、S&P500だけに20年間、毎年2000ドルづつ投資をした結果をまとめたもの。
【上から資本が増えやすい順】
➀連続して完璧なタイミングで買う
➁年初に一括で買う
➂毎月積立で買う
➃連続して最悪なタイミングで買う
➄S&P500ではなく国債を買う
市場にどれだけ早く入れるかも成功するための大事な要素です。投資に慣れてきたら、あえて一括投資をしてみるという挑戦もしてみてね。
サテライト戦略① 債券やコモディティを併せて持つ
ウォーレンバフェット氏が奥さんにあてた手紙の内容は、S&P500だけに全突っ込みするのではなく、債券を一緒に買うように促すものでした。
S&P500:90%
債券:10%
S&P500だけに全突っ込みすると、米国経済や市場の動きをもろに受けることになります。
資産の目減りがリスクに感じるなら、守りの資産として一部を債券や現金に変えておくのもよい方法です。
債券だけじゃなく、金などのコモディティや、現物資産の不動産など、分散先はたくさんあるよ。自分に合ったものを少しずつ調べてみるのがおすすめです。
サテライト戦略② 金利上昇に強い銘柄を併せて持つ
S&P500だけに全突っ込みすると、上位5銘柄の影響を大きく受けてしまうことはお話しました。
S&P500の上位銘柄は、現状ハイテク銘柄の割合が大きくなっています。
ハイテク銘柄は、どうしても金利の影響を受けやすく、金利が上昇すると下落しやすいという特徴があります。
ハイテク銘柄は、金利上昇に弱いのです。金利上昇に負けない銘柄を追加で購入しておくと、合理的にリスクを減すことができます。
金利上昇や景気後退の影響を受けづらい銘柄と言えば、銀行関連株や日用品関連株です。
三菱UFJFG
三井住友FG
コカ・コーラ
P&G
プロクター・アンド・ギャンブル など
コカ・コーラは、ウォーレンバフェット氏もお気に入りの株として有名だよね。のちのちこれらの個別株を買い足していくことも、検討の余地ありです。
それでもS&P500の10年後が心配なら全世界株を買うのが吉
それでもS&P500だけに全突っ込みするのはちょっと…と思う方は、もしかしたら全世界株への投資の方が投資方針に合うかもしれません。
eMAXIS Slimシリーズのオールカントリー(オルカン)や楽天全世界株式が有名です。
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
楽天・全世界株式インデックス・ファンド
とはいえ、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)でさえ中身の6割は米国株です。
アメリカの未来が明るくないと思う人は、他の投資信託と組み合わせて、米国株式の比率を落とす工夫をしてみてもよいかもしれません。
本当に米国を信じられないOR好きじゃないなら、オルカンも微妙かも…!笑 くれぐれも他人の意見を鵜呑みにせず、自分の価値観に合った選択をしましょう!
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S&P500だけでいいのはこんな人
S&P500はとても人気がありますが、人によって向き不向きがあるのは事実です。
私がいったんS&P500だけでもおすすめできるなと思う人は、こんな人です。
デメリットを理解した上で、リスク管理ができる人
S&P500だけに投資をする場合はデメリットも多く、絶対大丈夫とは言い切れません。
しかし、デメリットを理解し、そのリスクを享受できるのであれば、間違った選択ではありません。
投資は1回やったら終わりというものではありません。その後の資産状況次第で、自分のリスク許容度に合わせたアレンジをしていくのがおすすめです。
投資経験が少なく、まずは投資に慣れたい人
投資経験がない人は、自分のリスク許容度がよくわからないと思います。
その場合は、とりあえずS&P500に連動するインデックスファンドを積立投資することから始めるのもひとつの手。
まずは、自分が持っている現金を株に変えてみる経験をしながら、徐々に慣れていくのがよいでしょう。
S&P500は米国にまるっと投資できるという意味では、特に難しい分析も必要がないため、最初の一歩として悪くない選択です。
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まとめ:NISAはs&p500だけでいいと言われる理由を解説!
結論から言うと、S&P500だけ全突っ込みしても問題ないかどうかは、人によります。
S&P500だけでいいと言われる理由は、以下のとおり。
過去の実績・パフォーマンスがすごいから
米国株は今後も長期的な経済成長が期待できるから
S&P500だけでも分散投資効果があるから
良い銘柄が生き残る仕組みを採用しているから
投資コストが低く、効率的に投資できるから
番外編:投資の神様バフェット氏が推奨しているから
S&P500に連動するインデックスファンドは、とても人気がありますが、全突っ込みするとしたら以下のリスク・デメリットについて認識しておく必要があります。
S&P500は100%米国株→アメリカ経済の影響を大きく受ける
米国株の今後を心配する声も多い→逆イールドが今も継続
S&P500の上位銘柄はハイテク株が牽引→ハイテク株の影響が大きい
S&P500の組み入れ銘柄は大型株のみ→中小型に分散投資できない
デメリットに対して自分がどれくらいリスクをとれるかをよく考えて、S&P500への投資戦略を検討してみましょう。
S&P500はインデックスファンド&NISAのつみたて投資枠で買う
S&P500は時間分散を効かせて買う
債券やコモディティを併せて持つ
金利上昇に強い銘柄を併せて持つ
それでもS&P500の10年後が心配なら全世界株を買うのが吉
それでは今日も、まめまめしい一日を。
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