企業型確定拠出年金がひどいってほんと?
会社で勝手に加入させられているけど、デメリットが心配…
今回は、こんな疑問にお答えします。
▼本記事の内容
・企業型確定拠出年金(企業型DC)とは
・企業型確定拠出年金はひどいと言われる理由(デメリット)
・企業型確定拠出年金(企業型DC)とiDeCoは併用できる?
老後の生活費を自分で準備するための選択肢として、今、確定拠出年金が注目されています。
特に企業が導入する「企業型確定拠出年金(企業型DC)」は、加入者数が右肩上がりで上昇中。
令和3年末時点での加入者数は782万人で、9年前と比べると、なんと1.7倍に増加しています。
ただ、従業員が理解しないまま、急に導入が進んでいるケースも多いようで、苦情に繋がってしまうことも多いのだとか。
「企業型確定拠出年金(企業型DC)ってなに?知らないうちに加入させられてる…ひどい!」って、なっちゃうようです。
そこで今回は、企業型確定拠出年金(企業型DC)がひどいと言われる理由を徹底解説。
活用すれば老後の強い味方になってくれる、企業型確定拠出年金(企業型DC)の基本をまとめてみました。
ご紹介内容はあくまで個人の見解と運用実績であり、正確性や安全性を保障するものではありません。また情報提供のみを目的としており、投資、法務、税務その他のアドバイスを意図しているわけでもありません。当サイトに掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。詳細はこちら
企業型確定拠出年金(企業型DC)とは
まずは企業型確定拠出年金(企業型DC)とはなんなのか、そこから整理してみましょう。
会社員のための「企業年金」のひとつ
目的は「国民の老後生活の安定」
基本掛金は企業が出してくれる
従業員も掛け金を上乗せできる(マッチング拠出)
運用・管理は従業員自身が行う
60歳以降、運用資産を老後資金として受け取れる
一つずつ見ていきましょう。
会社員のための「企業年金」のひとつ
企業型確定拠出年金(企業型DC)は、企業が毎月出してくれる掛け金を、加入者である従業員が運用して、60歳以上になったら受け取ることができる、企業年金制度のひとつです。
企業型確定拠出年金(企業型DC)
=企業が毎月出してくれる掛け金を、加入者である従業員が運用
=60歳以上になったら、老後資金の一部として受け取ることができる
基本だけだと、とてもシンプルな制度です。
企業型確定拠出年金(企業型DC)がすごいのは、お金を出している企業側と、お金を受け取る従業員側の両方に節税や減税のメリットがあること。
企業=掛け金は福利厚生費として、全額損金にできる
従業員=企業に出してもらった掛け金で、老後資金を作れる
企業と従業員の両方のメリットになるので、加入者数はどんどん拡大中です!
令和3年末時点での加入者数は、782万人で、9年前と比べると、なんと1.7倍に増加。
かなり人気の制度だよね…!
目的は「国民の老後生活の安定」
企業型確定拠出年金(企業型DC)の導入目的は、「国民の老後生活の安定」です。
これは、確定拠出年金法の第一章。
「国民の老後生活の安定」のために、「自主的な努力を支援」するとしているのが大きなポイントです。
第一章 総則(目的)第一条 この法律は、少子高齢化の進展、高齢期の生活の多様化等の社会経済情勢の変化にかんがみ、個人又は事業主が拠出した資金を「個人が自己の責任において運用」の指図を行い、「高齢期においてその結果に基づいた給付を受ける」ことができるようにするため、確定拠出年金について必要な事項を定め、「国民の高齢期における所得の確保に係る自主的な努力を支援」し、もって公的年金の給付と相まって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする。
これからの時代は、「ちゃんと自分で老後資産をつくる努力をしてほしい」という国の考えがわかる条文になっています。
ぼーっとしてるだけだと困るよ!って言われている感じがします。
これが、人によっては「企業型確定拠出年金(企業型DC)ってひどい」と考えるひとつの要因かもしれません。
急に責任逃れするなー!みたいな意見もあったりします。笑
基本掛金は企業が出してくれる
「企業型確定拠出年金(企業型DC)はひどい」という意見や心配はあるにせよ、基本的にはとてもありがたいのがこの制度。
なぜなら、基本となる掛け金は企業が出してくれ、個人は1円も出さない場合でも運用が始められるからです。
企業が拠出する掛け金の限度額は、通常月額55,000円。
他の企業年金も併用している場合は、月額27,500円になっています。
企業の掛け金の限度額:月額55,000円
企業の掛け金の限度額(併用している場合):月額27,500円
限度額は上記のとおりですが、実際にいくら企業が出すかどうかは、企業が自由に決めることができます。
いくら出してもらえるかは、勤め先次第!わたしの会社の場合は、月額24,000円だよ。
従業員も掛け金を上乗せできる(マッチング拠出)
基本的な掛け金は、企業が出しますが、そこに従業員が自らお金を追加して、運用する金額を増やすことができます。
これが、「マッチング拠出」と呼ばれる制度です。
マッチング拠出制度
=従業員が自らお金を追加して、運用する金額を増やすことができる制度
マッチング拠出を導入するかどうかも、企業が決めます。
マッチング拠出制度があるからといって、従業員は絶対にお金を追加しないといけないわけではありません。
あくまで任意加入できるだけなので、心配しないでね。
マッチング拠出制度を利用する時は、以下の2つの制限があります。
➀事業主掛金の金額を超えないこと
➁事業主掛金との合算で法的上限額(55,000円/月)を超えないこと
例えば、事業主が出してくれる掛け金が、24,000円の場合、従業員も24,000円までしか拠出できません。この場合、法的上限額の55,000円/月に満たない、48,000円/月が、この企業の企業型確定拠出年金の限度額です。
(事業主:24,000円/月)+(従業員:24,000円/月)=合計48,000円
だから、企業によって企業型確定拠出年金の限度額は違うんですね。
運用・管理は従業員自身が行う
企業型確定拠出年金の運用・管理は、従業員自信が行います。
企業が代わりに運用してくれることはありません。
運用方法によって、資産が増減しますが、どんなに減ってもそれは従業員の自己責任です。
企業型確定拠出年金の運用のためには、ある程度資産運用の勉強をすることが必要になります。
ほったらかしでもいいけど…せっかく無料で運用できる制度、使わないのはもったいないよね…
60歳以降、運用資産を老後資金として受け取れる
企業型確定拠出年金で在職時に積み立てたお金は、60歳を過ぎたら年金や一時金として受け取ることができます。
60歳を過ぎないと受け取れないのがポイントです。
加入者が障害を負ってしまったり、亡くなってしまった場合は、例外として受け取ることができます。
また、脱退一時金としての受け取りが認められるケースもゼロではありませんが、適用されるケースは多くありません。
企業型確定拠出年金のメリット
企業型確定拠出年金は、企業が出してくれるお金で資産運用ができるだけでなく、税制優遇が受けられるなどのメリットも注目されています。
全ての掛金が所得控除になる
運用して得た利益は課税されない
年金受け取り時に所得控除できる
口座管理手数料は企業が負担してくれる
離職や転職しても積立金を持ち運べる
一つずつ見ていきましょう。
全ての掛金が所得控除になる
いちばんのメリットは、掛金が所得控除になることです。
会社からもらうお給料には、普通、所得税や住民税がかかります。
しかし、企業型確定拠出年金の掛金は、会社からもらっているにも関わらず、給与扱いにはなりません。
そのため所得税や住民税などの税負担を削減することができます。
これはすごい!
運用して得た利益は課税されない
さらに、企業型確定拠出年金として運用し、得た利益は課税されません。
通常、個人で株や投資信託を買って運用・売却した場合、その売却益には、通常20.315%の税金がかかります。
例えば、100万円を運用し、それが200万円に到達した時点で売却した場合、売却益は100万円です。
100万円のうち、20万315円を税金として納める必要があります。
100万円×20.315%=20万315円←税金
手元に残るのは、79万685円です。
しかし、企業型確定拠出年金なら、100万円を丸ごと手に入れることができます。
100万円と79万円の差はおおきいぞ…。
年金受け取り時に所得控除できる
企業型確定拠出年金は、60歳をすぎて受け取る時にも税金の優遇制度を受けることができます。
【企業型確定拠出年金の受け取り方】
➀退職金として受け取る(一括)=退職所得控除の対象
➁年金として受け取る(分割)=公的年金等控除の対象
退職金として受け取る場合は、勤続年数が20年以下の場合と20年以上の場合で控除額が違います。
長く勤めてきた人のほうが優遇されているよ!
例えば、30年務めてきた人が、企業型確定拠出年金として2000万円をもらう場合は、以下のとおり。
計算項目 | 条件 |
---|---|
勤続年数 | 30年 |
企業型確定拠出年金 | 2,000万円 |
退職控除額 | 1,500万円 =((勤続年数:30年)ー(20年))×70+800万円 |
課税額 | 500万円 =2,000万円ー1,500万円 |
課税されるのは500万円分だけ!
10年しか務めてない場合は、計算式が変わります。
計算項目 | 条件 |
---|---|
勤続年数 | 10年 |
企業型確定拠出年金 | 2,000万円 |
退職控除額 | 400万円 =(勤続年数:10年)×40 |
課税額 | 1,600万円 =2,000万円ー400万円 |
なんと、1,600万円もかかっちゃう!やっぱり国はまだ、長く務める人を応援したいみたい。
口座管理手数料は企業が負担してくれる
企業型確定拠出年金が、個人型確定拠出年金(iDeCo)で資産運用するよりお得だと言われる大きな理由のひとつが、口座運用管理手数料を会社が負担してくれること。
個人型確定拠出年金(iDeCo)の場合、初期費用や管理手数料がかかるんです。
国民年金基金連合会に加入する時の手数料として、通常は2,829円(税込)を支払いますが、企業型確定拠出年金ならゼロ。
その他、事務委託手数料や口座管理手数料がかかる証券会社もあるので、負担額ゼロで運用が始められます。ありがたや~。
離職や転職しても積立金を持ち運べる
企業型確定拠出年金は、離職や転職などの働く環境の変化があっても、積み立てた資産を持ち運ぶことができます。
ただし、3年以内に離職や転職をしてしまうと、持ち運べません…。
企業型確定拠出年金は、勤労年数が多い人に優遇されている制度だと言えそうです。
企業型確定拠出年金がひどいと言われる理由(デメリット)
企業型確定拠出年金はひどいと言われる理由(デメリット)をまとめると、以下のとおり。
勤め先のルールによって制度が異なる
原則60歳まで引き出すことができない
元本割れリスクがある
各種手数料がかかる
自分で運営管理機関を選ぶことができない
購入できる投資商品のラインナップが少ない
投資教育を十分にされないためほったらかしが多い
公的年金額が減少する可能性がある
転職や離職した場合に移管手続きが複雑
3年以内の退職だと積立金が没収されてしまう
結構あるなぁ…。一つずつ見ていきましょう。
勤め先のルールによって制度が異なる
そもそも会社員の場合、企業型確定拠出年金があるかないか、iDeCo(個人型)と併用できるかどうかは勤め先のルールによって異なります。
自分の会社がどれだかわかります?意外と難しいよね…
①会社に企業型確定拠出年金がない
②会社に企業型確定拠出年金がある
③iDeCo(個人型)との併用が認められている
④iDeCo(個人型)との併用が認められていない
そしてその会社の方針によって、いくら掛金にできるかは限度額が異なります。
企業型確定拠出年金が導入されている企業にお勤めの場合は、さらに4つの導入方法があります。
①選択制DC
=今支払われている給料の一部を掛金にする
=任意加入の制度
②上乗せ支給
=今支払われている給料とは別に掛金を追加する
=全員加入の制度
③選択制DC+上乗せ支給
=今支払われている給料の一部を従業員が掛金にする+企業が掛金を追加する
=選択制DC分は任意加入だが、上乗せ支給分は全員加入の制度
④マッチング拠出
=会社から支給される掛金の額を上限として、従業員が掛金を追加する
=会社支給分は全員加入、追加分は任意加入
=マッチング拠出による掛金は、全額所得控除されるので税金はかからない
ああ、種類多い…混乱しちゃう…ww
フィデリティ投信がまとめた「確定拠出年金(DC)加入者意識調査」によると、企業型確定拠出年金の加入者に「自分の企業型確定拠出年金ではどれくらい会社がお金を積み立ててくれているか?」を聞いたところ、43%がその金額を知らなかったそうです。
分からない(全体):43%
分からない(男性):39%
分からない(女性):51%
企業型確定拠出年金の複雑さはわたしたち一般人だけでなく、専門家の間でも問題提起されています。
専門家の間でも「企業型確定拠出年金は制度が複雑すぎてひどい」という意見が珍しくありません。
せめてもう少しわかりやすい制度にできたら、企業型確定拠出年金が身近になっていくかもしれませんね。
原則60歳まで引き出すことができない
企業型確定拠出年金がひどいと言われるもうひとつの理由は、原則60歳まで引き出すことができないことです。
企業型確定拠出年金は、ほぼ解約できません。
一度始めたらノンストップで60歳まで運用を続けることになります。
それまでに借金がどんなに膨らんでも、企業型確定拠出年金からは一切、お金を引き出すことができません。
これが従業員が企業型確定拠出年金に追加で自分のお金を積立するか迷う大きな理由のひとつです。
・借金ができて払えないと大変なことになる
・子どもの教育資金が急にかかることになったけど、お金が足りなくて行かせられない
・今投資するとめちゃくちゃ良いタイミングだが、原資がない など
人生で起こるいろんなアクシデント。
お金が必要になっても、企業型確定拠出年金として積み立てているお金は絶対に使えないのです。何があっても。
であれば…積み増しするんじゃなくて、自分で証券口座を開いてそっちで運用しようかしらとか思うよね…。笑
2021年10月に行われた確定拠出年金1万2000人意識調査によると、企業確定拠出年金制度の詳細を知っているのに加入しない理由の第1位が「60歳まで引き出しできないから」でした。
その構成比は、以下の通りです。
若者:63%
中堅:31%
高齢:6%
若い人ほどライフイベントとして何が起こるかわからないという心配が多いので、「60歳まで引き出しができない」ことをデメリットに感じることもうなずけます。
アメリカでは、401k(確定拠出年金)の加入者を対象とした確定拠出年金を担保にしたローン制度も一般的だと言います。
緊急時の支出に備える仕組みが整えられているので、401k(確定拠出年金)は導入率が高いんだなぁ。日本でも近いうちにそのような制度ができる可能性もありそうですね。
元本割れリスクがある
企業型確定拠出年金は、あくまで自分で資産を運用する制度です。
運用商品の中には元本保証型以外のものも含まれるので、選択次第では元本割れをするリスクもゼロではありません。
【主な運用対象商品】
定期預金
保険
投資信託 など
企業型確定拠出年金は、あくまで投資。現金をそのまま持っているのとはわけが違うので、油断は禁物です。
自分で運営管理機関を選ぶことができない
企業型確定拠出年金は、勤め先となる企業が運営管理機関を選びます。
従業員は運用管理機関を自分で選ぶことができません。
自分が選びたい商品がないこともあり得ます。
企業がお金を出してくれてるのもあって、多少自由度は制限されます。
購入できる投資商品のラインナップが少ない
企業型確定拠出年金がひどいと言われがちなのは、購入できる投資商品のラインナップが少ないことです。
企業型確定拠出年金は、証券会社に口座を開いて、自分で購入するように自由に銘柄を選ぶことができません。
すでに30~40銘柄が決まっていて、その中で自分が買いたい銘柄を選ぶ仕組みになっています。
大きく分けると、その種類は以下の2種類です。
①元本確保型商品
=ローリターン・ローリスク
=損害保険・生命保険・定期預金などで、利率実績は0.001%など低いのが特徴
②元本確保型以外の商品
=ミドルリターン・ミドルリスク
=上記以外の国内株式・外国株式・国内債券・外国債券・それらすべてを組み合わせたバランスファンドなどで、利率は元本確保型商品より高い
証券会社の投資信託に慣れている人は、普段数千種類から選んでいるわけなので、残念な気持ちになりますよね…。わたしも仕方なく、自分が買いたい銘柄にちょっと似ているのを買ったりしています。
投資教育を十分にされないためほったらかしが多い
企業型確定拠出年金がひどいのは、企業が従業員への投資教育を十分にしないため、ほったらかしにしている人が多いことも挙げられます。
これだけ複雑な企業型確定拠出年金なので、もちろん企業が従業員に教育しなければ、なかなか有益な利用をしてもらえません。
そもそも従業員のお金の知識には、人によって幅があり、説明を聞かなくてもわかる人もいるかもしれませんが、説明がなければ当たり前のように「ほったらかし」にする従業員もいるでしょう。
2018(平成30)年度決算 確定拠出年金実態調査結果 (概要)によると、継続投資教育の実施率は78.7%で、この3年間に1度も実施していない企業も8%はいました。
確定拠出年金法では、企業は従業員に対して、基礎的な資料の提供等を行うように努めなくてはならないとしていますが、これはあくまで努力義務。
第四節 運用(事業主の責務) 第二十二条 事業主は、その実施する企業型年金の企業型年金加入者等に対し、これらの者が行う第二十五条第一項の運用の指図に資するため、資産の運用に関する基礎的な資料の提供その他の必要な措置を継続的に講ずるよう努めなければならない。 2 事業主は、前項の措置を講ずるに当たっては、企業型年金加入者等の資産の運用に関する知識を向上させ、かつ、これを第二十五条第一項の運用の指図に有効に活用することができるよう配慮するものとする。
もちろん罰則があるわけではないので、十分な教育がなされている企業は限定されます。継続的な投資教育の実施率は、78.8%(前回75.6%)で、実施率は、少しずつ上がっているみたい。
実施率は年々あがっていますが、未実施かつ計画していない企業が16%となっていますので、まだ不十分のように感じます。また継続投資教育を実施したことがある企業のうち1年以内に実施しているのは56.7%となっていますが、1年に1回は継続投資教育をおこなう方が、従業員の方々は不安に感じず「ひどい」という考えは少なくなるのではないでしょうか。
また、転職する際のサポートも十分ではないというのも企業型確定拠出年金に関する口コミでよく上がってくる意見のひとつですね。
従業員も企業型確定拠出年金を学ぶ気がない
企業型確定拠出年金の教育に関しては、もちろん企業だけが悪いわけではありません。
企業からみたら、「従業員も企業型確定拠出年金を学ぶ気がなくてひどい」と悩んでいるかも…?
2021年10月に行われた確定拠出年金1万2000人意識調査によると、これまでに企業型確定拠出年金の運用先変更したことがない人(=加入後ほったらかしの人)は、54%もいることがわかりました。
変更したことがない(全体):54%
変更したことがない(男性):51%
変更したことがない(女性):63%
またしても、女性が低い…。
そして、目立つのは運用先の変更頻度と「運用が好調と感じるか」の関係です。
ちゃんと運用先の変更を定期的に行っている人のほうが、運用が好調だと答えています。
この結果をみると、年に3~5回は見直すぐらいお金への意識が高い人のほうが、企業型確定拠出年金の運用はうまくいきそうです。
公的年金額が減少する可能性がある
企業型DCの制度には「選択制DC」と呼ばれる制度があります。
最近増えている、この「選択制DC」が「ひどい」と言われがちみたい…
選択制DC
=退職金や給与などの一部を企業型DCの掛金として拠出するか、これまで通り給与として受け取るか、従業員が自らの意志で選択することができる確定拠出年金制度のこと
企業が今までの給与とは別に掛金を用意してくれるのではなく、給与の一部を掛金にする仕組みなの…そりゃ、いろいろ、文句も出そうかも…笑
選択制DCが導入されている企業で、給与の一部を企業型DCの掛金として使った場合、標準報酬月額が減少することになります。
標準報酬月額は、将来受け取ることができる公的年金と密接に関係しているため、金額が減少してしまう可能性があります。
【標準報酬月額が減ることで変わるもの】
・所得税の支払いが減る
・住民税の支払いが減る
・社会保険料の支払いが減る
・将来受け取ることができる公的年金が減る
掛金を給料として受け取るか、企業型確定拠出年金として受け取るか、従業員が選ぶことができますが、将来受け取ることができる公的年金が減る可能性をしらないまま企業型確定拠出年金として選ぶことを選択してしまい、「ひどい」と絶望する方もいるようです。
もちろん運用結果が良ければ受給額はもらえるはずだった金額を上回りますが、将来支払われる厚生年金の金額が少なくなる可能性があることは否めません。
運用がうまくいけば、大丈夫ではあるけど…未来のことは誰にもわからないしね。
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3年以内の退職だと積立金が没収されてしまう
企業型確定拠出年金は、原則60歳まで払い出しや解約をすることはできないため、転職をした場合でもこれまでの積立額を引き継ぐことが可能です。
しかし、勤務期間が3年以内の場合、企業拠出分が回収されてしまうというデメリットがあります。
最近は定年まで同じ企業で働くケースはかなりまれ。
3年以内の転職もめずらしいことではないので、退職の手続きをしてみてはじめて企業型確定拠出年金が没収されてしまうことを知る人も少なくないようです。
知らなかった!とがっかりする方も…
投資が上手くいっている方は、2~3年でも大きく増えている可能性があるので、確かにもったいないかも…。
自分の企業型確定拠出年金がどうなっているか、勤務年数はどのくらいなのかぐらいは、退職前に調べておきたいですね。
企業型確定拠出年金のメリットが受けにくい人
企業型確定拠出年金制度は、従業員の福利厚生としてとても優秀な制度です。
投資の勉強もできるしね!
しかし、その一方で企業型確定拠出年金のメリットが受けにくい人ももちろん存在します。
運用できる年数が少ない人
そもそも納税額が少ない人(給与が少ない人)
詳しく見てみましょう。
運用できる年数が少ない人
企業型確定拠出年金は、コツコツと毎月積み立てて、長く続けることが大事です。
企業の方針次第で、金額やマッチング拠出の有無が決まるので、ある意味運も必要ですが、同じくらい時間も必要です。
そもそも勤続年数が短いと、あんまり増えないんだよね…。
さらに退職金などで受け取るつもりの場合は、勤続年数が長いほうが税金面も断然お得です。
そういう意味では、しょっちゅう退職や転職を繰り返している人に向いている制度であるとは言えません。
企業型確定拠出年金のためにムリしてずっと同じ会社にいる必要はないですが、勤続年数が長い人のほうがメリットが多くなりがちなのは事実です。
そもそも納税額が少ない人(給与が少ない人)
企業型確定拠出年金は、ある意味、税金面の優遇制度のひとつだという人もいます。
確かに所得税や住民税がかなり節税できるので、もともと納める税金が多い人ほど得が大きい制度です。
もともとそんなに給与が多くない人、住宅ローン控除などの大きな税制優遇を受けている人などは、メリットを感じにくいかもしれません。
企業型確定拠出年金がおすすめの人
逆に、企業型確定拠出年金がおすすめの人は、以下のとおり。
老後に備えてしっかりお金を貯めたい人
自分の資産運用に興味を持って運用できる人
一つずつ見ていきましょう。
老後に備えてしっかりお金を貯めたい人
企業型確定拠出年金に不満を持つ方の多くが、「60歳まで引き出せない」ことです。
たしかにNISAなどの他の制度に比べたら自由度が低いけど、そもそも企業型確定拠出年金の目的は、老後の資産作り。
逆に「60歳まで引き出せない」制度じゃないと、若い時に使っちゃう人が出てきて、意味がなくなっちゃうもんね。
企業型確定拠出年金が、原則60歳まで引き出せないのは、デメリットである一方で、メリットでもあります。
企業型確定拠出年金で積み立てたお金は、老後資金として使用すると、ある意味諦めておくのがベター。
企業が出してくれるお金なので、諦めるのはそんなに難しくないでしょ?
老後の資産を作る目的として割り切ることができれば、所得控除や運用益の非課税など、こんなに税制優遇がされた制度はありません。
自分の資産運用に興味を持って運用できる人
企業型確定拠出年金は、私たち従業員の老後を支える素晴らしい制度です。
しかし、なにも勉強せずにほったらかしにしておくだけなら、あまり意味がありません。
ひどいと言われるケースもご紹介しましたが、人によっては大したデメリットではない可能性もあります。
企業型確定拠出年金の活用方法は、十人十色なんです。
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企業型確定拠出年金と他の年金制度との違い
ここからはごっちゃになってしまうことが多い類似制度との違いをまとめてみましょう。
厚生年金基金との違い
確定給付企業年金との違い
個人型確定拠出年金(iDeCo)との違い
整理しておかないと、いつもわかんなくなっちゃう…笑
厚生年金基金との違い
厚生年金基金は、2014年4月以降は新設できなくなった、旧型の企業年金制度です。
今現在は、新しく加入することはできません。代わりに、確定給付企業年金に移行する企業が増えています。
厚生年金基金
=企業が年金制度の一部を国に代わって支給し、さらに上乗せ給付を行い老後資金を運用する制度
=昭和41年10月に設立し、2014年4月に新設は廃止
=加入者数は12万人(令和5年3月末現在)
もともとは、企業が年金制度の一部を国に代わって支給し、さらに上乗せ給付を行うことで、より手厚い老後保障を従業員に提供する制度として、昭和41年10月に設立されました。
厚生年金保険法に基づいて実施され、安定的に運用されていましたが、バブル期以後は企業の運用益が低迷し、それが新設できなくなった理由のひとつです。
生命保険協会によると、令和5年3月末の加入者数は12万人で、確定給付企業年金の911万人と比べると、かなり小規模な制度になっています。
確定給付企業年金との違い
確定給付企業年金は、2014年4月以降は新設できなくなった、厚生年金基金の問題を解決するために作られた企業年金です。
企業型確定拠出年金との違いは、将来の老後資金としてもらえる額があらかじめ決まっていること。
そして、そのお金の運用や管理が、従業員ではなく企業に任せられていることです。
企業型確定拠出年金と確定給付企業年金の違いを表でまとめてみると、以下のとおり。
制度の種類 | 確定給付企業年金 | 企業型確定拠出年金 |
---|---|---|
目的 | 老後資金の確保 | 老後資金の確保 |
将来の給付額 | 確定 | 未確定 (運用結果次第で変化) |
掛金の支払い | 企業 | 企業 (+マッチング拠出) |
運用の責任 | 企業 | 従業員 |
資産管理 | 企業 | 外部の運営管理機関 |
企業へのリスク依存度 | 高い | 低い |
企業への負担がかなり大きいなぁ…。
企業型確定拠出年金は、基本的な資産の運用管理は個人にゆだねられていて、資産が増えても、減っても、自己責任です。
一方、運用先も自分たちで決めることができるので、自由度が高く、自分の資産を自分で作る意識が芽生えやすいという特徴があります。
しかし、確定給付企業年金の場合は、あらかじめ決められた老後資金を数十年後に必ず従業員に渡す必要があり、資金を必ず作らないといけない義務は、企業側にあります。
もちろん、その分運用先などは従業員が自分で選ぶことはできず、お金を手にするまでは、どうやって運用されているのかを正確に知るのが難しい仕組みです。
老後資金の金額が決まっていたほうがいいという人も多いかもしれないけど、運用成績が悪いと企業自体の倒産なども危ぶまれるので、リスクは高そう…。やっぱりわたしは、自分で運用したいなぁ…。
個人型確定拠出年金(iDeCo)との違い
企業型確定拠出年金(企業型DC)とごっちゃになりがちなのが個人型確定拠出年金、通称iDeCo(イデコ)です。
厚生年金基金や確定給付企業年金など、企業に自分の老後資産作りを任せる時代は終わり、自分で責任をもって運用する企業型確定拠出年金(企業型DC)が生まれ、さらにその先を行くのが、個人型確定拠出年金のiDeCo(イデコ)です。
iDeCo(イデコ)は、企業型確定拠出年金(企業型DC)と同じ確定拠出年金制度ですが、あくまで私的年金で、企業はまったく関係がありません。
企業に勤めていない無職の方や主婦の方でも、60歳未満で国民年金を納付している人なら自由に加入することができます。
企業型確定拠出年金(企業型DC)よりもさらに自由度が高くなったのが、iDeCo(イデコ)!
ただし、企業型確定拠出年金(企業型DC)のように、企業からのカンパはないので、全額自分で用意する必要があります。
制度の種類 | 企業型DC | iDeCo |
---|---|---|
目的 | 老後資金の確保 | 老後資金の確保 |
将来の給付額 | 未確定 | 未確定 |
掛金の支払い | 企業+個人 | 個人 |
運用の責任 | 個人 | 個人 |
資産管理 | 運営管理機関 | 運営管理機関 |
企業へのリスク依存度 | 低い | 低いどころか無関係 |
税制優遇 | 掛金の全額が所得控除対象 運用益の全額が非課税 一時金で受け取る場合は 退職所得控除対象 年金で受け取る場合は 公的年金等控除対象 | 企業型と同じ |
年末調整 | 企業 | 個人 |
企業型DCとiDeCoは併用できる?
企業型確定拠出年金(企業型DC)と個人型確定拠出年金(iDeCo)って併用できるの?
できるよ。でも、無条件にできるわけではなくて、併用する場合の条件とか注意点があるよ。
旧:企業型DCとiDeCoを併用する場合の要件(2022/10まで)
※追記:2022年10月からはこのような要件なしに、企業型DCとiDeCoの併用は可能になりました。
企業型DCとiDeCoを併用する場合は、以下の要件をクリアする必要があります。
➀企業にiDeCoの併用を認める規約があること
➁事業主掛金の上限は月額3.5万円であること
(確定給付型にも加入している場合は、上限月額1.55万円)
無条件にあっちもこっちもで老後資金を作っていいってことではないんだね。
併用できるがマッチング拠出かiDeCoを選択
企業型確定拠出年金(企業型DC)と個人型確定拠出年金(iDeCo)の併用はできます。
ただ、個人型確定拠出年金(iDeCo)を利用する場合、企業型確定拠出年金(企業型DC)のマッチング拠出は利用ができなくなるので、注意が必要です。
マッチング拠出の上限額は、企業の掛金によって異なるため、勤め先ごとに違います。
iDeCoの上限額は、加入者の職業によって、異なります。
職業 | マッチング拠出の上限額 |
---|---|
自営業者、個人事業主(フリーランス) | 月額68,000円(年額816,000円) |
会社員 会社に企業年金がない場合 | 月額23,000円(年額276,000円) |
会社員 企業型DCのみ加入している場合 | 月額55,000円から企業型DCの掛金額を引いた額 ※月額20,000円まで |
会社員 企業型DCとDBに加入している場合 | 月額27,500円から企業型DCの掛金額を引いた額 ※月額12,000円まで |
会社員 企業型DBのみ加入している場合 | 月額12,000円(年額144,000円) |
公務員 | 月額12,000円(年額144,000円) |
専業主婦(夫)の方(国民年金第3号被保険者) | 月額23,000円(年額276,000円) |
企業型DCに加入している人は、会社にもよるけど、上限なら月額20,000円までiDeCoを利用できるよ。ちょっとおすすめをシミュレーションしてみましょう。
【iDeCoに加入がおすすめの場合】
会社掛金:10,000円/月
→マッチング拠出なら、10,000円/月まで可能なので、合計20,000円
→iDeCoなら、20,000円/月まで可能なので、合計30,000円
→結論:iDeCoのほうが掛金を多く拠出できる!
【マッチング拠出に加入がおすすめの場合】
会社掛金:22,000円/月
→マッチング拠出なら、22,000円/月まで可能なので、合計44,000円
→iDeCoなら、20,000円/月まで可能なので、合計42,000円
→結論:企業型DCのマッチング拠出のほうが掛金を多く拠出できる!
あくまで会社掛金次第!気になる人は、自分で自分の会社の掛金を再確認して、計算してみよう。
また、マッチング拠出の場合は、口座管理料などは会社負担になっていることも忘れずに。
iDeCoの場合は、手数料の支払いが個人で必要になること、また手続き上の手間がかかることも念頭に入れて、自分にとって有利な制度を選びましょう。
会社員ならマッチング拠出のほうが気楽でお手軽な場合が多いかも??
筆者の場合は?マッチング拠出 VS iDeCo
実はわたくし枝豆は、マッチング拠出もiDeCoも選択していません。
やってないんかーい!笑
やっているのは企業型DCの企業の掛金の運用のみです。
やるとしたら…運用合計金額が多い企業型DCの「マッチング拠出」を選ぶかなとは思います。
【マッチング拠出の場合】
会社掛金:24,000円
マッチング拠出可能額:24,000円
合計:48,000円
【iDeCoの場合】
会社掛金:24,000円
iDeCo掛金:20,000円
合計:44,000円
あくまでわたしの場合ね! では、なぜどっちも選んでいないのか…
いちばん大きな理由は「より自由度の高い運用をしたいから」。
企業型DCの「マッチング拠出」で運用できる運用会社や、運用商品は企業が決めるため、種類が限られています。
実際に2021年度のわたしの企業型DCの運用利回りは、5.2%。
ちょっと少ないよねぇ…。ほぼほったらかしだからなぁ…。
私以上にほったらかしの0%の人がめちゃくちゃ多いけど。笑
この時期に証券会社で自分で購入したS&P500の運用利回りは、14.96%
10年後の利益を考えると、自分で運用したほうが4倍ぐらい多くなるんです。もちろん、ずっと同じ割合でいくわけはないけど…
わたしの場合は、これまで企業型DCも10年近くお世話になっていますが、選べる商品が少なく、いまいち気持ちがのらないのが本音。
最低限の設定変更を1年に1回すればいいかな…と思って、基本は放置です。
同じ資産を回すなら、お気に入りの投資信託が自由に買える方が、わたしは資産を増やしやすいと感じています。
せっかくだから、現在の実績利回りを想定利回りにして、10年後の資産の状況をシミュレーションしてみました。
【企業型DCマッチング拠出の場合】
毎月の積立金額:2.4万円
想定利回り(年率):5.2%
積立期間:10年
最終積立金額:376.7万円(元金288.0万円+利益88.7万円)
【自分で証券会社でS&P500連動型商品を購入した場合】
毎月の積立金額:2.4万円
想定利回り(年率):14.96%
積立期間:10年
最終積立金額:658.9万円(元金288.0万円+利益370.9万円)
わたしは、やっぱり投資自体が趣味のひとつ。
税金などのメリットはないわけじゃないし、結局最終的にどっちが得かは、今の時点ではわからないけど…。
どうせ同じ予算なら、自分で運用するほうが楽しいため、企業型DCの企業の掛金分はありがたくいただきながら運用しつつ、マッチング拠出はせず、自分の運用資金に回しています。
自分の気持ちに素直に!楽しく資産運用しましょう!
まとめ:企業型確定拠出年金はひどい?メリットとデメリット
企業型確定拠出年金(企業型DC)は、ひどい制度ではありません。
むしろ、企業がわたしたち従業員の将来の老後資金を作るための掛金を出してくれる、サラリーマンにとってありがたい制度です。
会社員のための「企業年金」のひとつ
目的は「国民の老後生活の安定」
基本掛金は企業が出してくれる
従業員も掛け金を上乗せできる(マッチング拠出)
運用・管理は従業員自身が行う
60歳以降、運用資産を老後資金として受け取れる
そのメリットは、以下のとおり。とにかく税制優遇が充実していて、大きな損はありません。
全ての掛金が所得控除になる
運用して得た利益は課税されない
年金受け取り時に所得控除できる
口座管理手数料は企業が負担してくれる
離職や転職しても積立金を持ち運べる
しかし、その一方で、制度を正確に理解しないまま運用が始まってしまい、自分が良しとしない選択をしてしまうことや、知らなかった事実をあとから聞かされて、「企業型確定拠出年金はひどい」と思わざるを得ない人もいるようです。
勤め先のルールによって制度が異なる
原則60歳まで引き出すことができない
元本割れリスクがある
各種手数料がかかる
自分で運営管理機関を選ぶことができない
購入できる投資商品のラインナップが少ない
投資教育を十分にされないためほったらかしが多い
公的年金額が減少する可能性がある
転職や離職した場合に移管手続きが複雑
3年以内の退職だと積立金が没収されてしまう
特に、企業が選択型DCを導入した場合や、退職や離職時に「ひどい」っていう不満が大きいみたい…
導入するのであれば、企業はきちんと導入教育をすべきですが、同時に従業員も資産運用の勉強に興味を持つ努力が必要かもしれません。
ぜひいっしょに、お金の勉強しましょう!
それでは今日もまめまめ楽しい1日を。
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