初心者
自分の物件の周辺の相場家賃が上昇してる…
家賃の値上げ交渉ってできる?
2023年以降、東京23区の平均家賃は上昇しています。
周辺の家賃相場が値上がりすると、「もしかしてうちの物件も利回りが改善できるのでは?」と、家賃の値上げを考える大家さんも多いのではないでしょうか?
しかし、家賃の値上げは簡単ではなく、5000円分の家賃を値上げするのさえ難しい&リスクが伴います。
そこで今回は、家賃の値上げが難しい理由を徹底解説!
実際に閑散期の悪条件下に、家賃の値上げを成功させた私のやり方と利回りの変化もまとめてみました。
▼本記事の内容
家賃の値上げ5000円が難しい理由
実際に家賃の値上げを成功させた具体的な方法
ご紹介内容はあくまで個人の見解と運用実績であり、正確性や安全性を保障するものではありません。また情報提供のみを目的としており、投資、法務、税務その他のアドバイスを意図しているわけでもありません。当サイトに掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。詳細はこちら
家賃の値上げは、5000円だろうが、1万円だろうが難しい…
実は、不動産オーナーと入居者には、家賃の値上げや値下げをする権利があります。
借地借家法の第32条をみてみましょう。
第三十二条 建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。
引用:借地借家法の第32条
ポイントは「当事者(=オーナーと入居者)」の両方に権利があるってことなんです。
基本的に家賃の値上げは一方的にはできない
正当な理由があれば、どちらも値下げ交渉・値上げ交渉ができますが、双方の合意がなければできません。
不動産オーナーは家賃を値上げしたいし、入居者は家賃を値下げしてほしいハズ。
だから、客観的にみてよっぽど正当な理由がない限りは、なかなか言い出しにくいのが普通だし、交渉を始めるとそれなりのリスクも伴います。
家賃の値上げ成功額の平均は5000円以下
初心者
とはいえ、最近の東京の家賃の上昇はすごいよね…
物価も上がっているので修繕費も値上がりしてるし、家賃をあげないとつらいかも…
たしかに家賃相場の値上がりは、値上げの「正当な自由」にはなるよね…。
実際に値上げを実施しようとしている大家さんは60%以上に上るみたい…!
全国の管理会社を対象に行われた全国賃貸住宅新聞のアンケートによると、物価の値上がりによる賃貸住宅の運営コストの増加を主な理由として、家賃値上げの動きが出ているとのこと。
Q.家賃の値上げを実施したか?
はい:51.7%
実施予定:10.1%
いいえ:38.2%
しかし、具体的な家賃の平均値上げ額は、家賃の3%未満、1000~3000円未満が最多となっていて、5000円以上の値上げはかなり難しいことであるとわかります。
1000~3000円未満:63.6%
3000~5000円未満:28.6%
家賃の3%未満:35.1%
家賃の3~5%未満:33.8%
新規の募集時に値上げ:92.2%
更新時に値上げ:49.4%
実際に私も「新規の募集時」に「家賃の3~5%未満」の範囲で値上げしています。
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家賃の値上げ5000円が難しい理由
家賃の値上げが難しく、5000円以上の値上げに成功する不動産オーナーが10%に満たないのには、理由があります。
家賃の値上げ交渉には「正当な理由」が必要
値上げ交渉には入居者が退去するリスクが伴う
法定更新の手続きがとられるリスクが伴う
それでも家賃の値上げ交渉にチャレンジする理由
一つずつ見ていきましょう。
家賃の値上げ交渉には「正当な理由」が必要
不動産オーナーは、法律で値上げ交渉をすることが認められています。
しかし、家賃を値上げするためには「正当な理由」が必要です。
あくまで客観的にみて納得できる理由が必要!
あたりまえかもしれないけど、オーナーの個人的事情では認められません。
正当な理由として認められる例
・不動産物件の固定資産税が上がったとき
・不動産物件の維持費が上がったとき
・不動産物件の資産価値が上昇したとき
・周辺の類似する物件の家賃相場より安いとき
正当な理由として認められない例
・不動産オーナーの不動産経営の悪化
・周辺の類似する物件の家賃相場と同等であるとき
・賃貸借契約内に家賃の増額を禁止する特約が定められているとき
でも、たとえ正当な理由に該当すると思っても、なかなか値上げ交渉に踏み切れないという大家さんも多いと思います。
なぜなら、値上げ交渉に踏み切ったことで逆にキャッシュフローが悪化したり、運営条件が悪くなってしまうリスクも伴うから。
値上げ交渉には入居者が退去するリスクが伴う
入居者に値上げ交渉をすると、入居者がとる選択肢は以下の4つです。
値上げを受け入れる
値上げを拒否する
退去する
交渉する(値上げ割合の減少など)
入居者は「値上げされるならもっといい家に住める」と感じ、退去を検討する可能性があります。
不動産オーナーにとって退去は、いちばん減収につながりやすい選択肢のひとつ。
新規募集費用(広告費、内装費、修繕費など)はもちろん、空室期間中の支払われない家賃分の減収を受け入れなくてはいけません。
私が所持する物件で、前回かかった新規募集費用は約14万円です。
必要費用 | 金額 |
---|---|
業務委託費&募集広告費 | 80,000円 |
内装修繕費 | 64,900円 |
↓内装修繕費の内訳↓ | |
クリーニング(1K・1R) | 24,000円 |
浴室鏡鱗取り | 2,000円 |
各所排水簡易洗浄 | 4,000円 |
床ワックス | 4,000円 |
室外機移動(配管延長作業込み) | 25,000円 |
もちろん敷金償却費で賄える部分もあるので、全額手持ちではないですが、できればそのまま住み続けてもらったほうが利回りは上がります。
法定更新の手続きがとられるリスクが伴う
入居者に値上げ交渉して、合意してもらえない場合は、元の条件で賃貸借契約が更新されます。
不動産オーナー側が契約更新を拒んだとしても、元の条件で自動更新される「法廷更新」の手続きがとられます。
法廷更新は強制的に適用されるから、大家さんが拒むことはできません。
建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。
引用:借地借家法第26条1項
法廷更新が問題なのは、その契約が「期間の定めのない契約」になることです。
期間の定めのない契約
=契約の更新という概念がなくなるので入居者が申し出ない限り解約できない
=賃貸借契約の更新料が発生しない
通常の賃貸借契約は期間が2年のものが多いので、2年ごとに更新料を受け取ることができますが、法廷更新になると受け取れなくなります。
揉めれば揉めるほど契約がややこしくなっていく…泣
それでも家賃の値上げ交渉にチャレンジする理由
リスクが伴う家賃の値上げ交渉ですが、リスクを抑えた形でわたしはチャレンジしました。
なぜなら、2023年の今は都内の家賃相場が上がっている=正当な理由が認められやすい環境にあるからです。
へーベルメゾンのマンスリーレポートによると、長らく停滞気味だった中古ワンルームマンションの家賃が、2023年から値上がりしています。
また、今後物件自体を売却する場合、家賃を適正価格に保っておくことは、売却価格を上昇させることにもつながります。
物件の価格を査定する方法の中には、収益還元法で査定する収益還元価格があります。
収益還元価格=物件の年間賃料収入総額 ÷ 還元利回り
家賃をいくら生み出せる物件なのかによって、査定価格が変わる可能性もあります。
今のところは特に売却予定はないけど、売却することになった時のためにも真面目に管理しないと…。今ってたぶん値上げチャンスではあるんですよね。
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体験談:2000円の家賃の値上げに成功した方法
実際に管理会社と相談し、所持していた物件の値上げを行いました!
リスクなく家賃の値上げが可能なタイミングを狙う
周辺の家賃相場チェックをする
管理会社との事前打ち合わせを行う
問い合わせ状況の確認をする
一つずつ見ていきましょう。
リスクなく家賃の値上げが可能なタイミングを狙う
前述したように、家賃の値上げ交渉はリスクも伴います。
揉めてまで家賃を上げる必要があるかは…要検討です。
わたしは揉める必要までは感じておらず、なるべくリスクの低い方法でチャレンジしたいと思っていました。
家賃を値上げするタイミングには2つのパターンがあります。
①入居者との契約更新のとき
②入居者が退去して、次の入居者募集のとき
私は②を狙って、調査をはじめました。
周辺の家賃相場チェックをする
家賃の値上げによって、入居者が決まらなくなったら本末転倒です。
管理会社からの家賃の値上げ提案は、今よりプラス2000円。
全体の家賃の割合でみると、約3%です。
家賃の値上げとしては、一般的な金額です。
実際に周辺の家賃相場をチェックして、この金額が適当なのかをチェックしました。
家賃相場を調べる時は、賃貸物件紹介サイト等で調べることが可能です。
①賃貸物件紹介サイトにアクセス
②値上げ検討物件と類似する物件の家賃をチェックする
値上げ検討物件と類似するかどうかは、以下のようなチェックポイントで見つけていき、大体の相場観をつかみます。
検討条件の例
・駅までの距離が近い
・部屋の面積が近い
・築年数が近い
類似物件を探していると競合の多さ&少なさもわかってきます。私の物件は狭いけど場所がかなりいいので…そのあたりも考慮しつつ…プラス2000円なら問題なさそうだなと判断しました。
調査ののちに、プラス2000円での募集を開始しました。
管理会社との事前打ち合わせを行う
私の場合は、入居者募集等の対応はすべて管理会社にお任せしています。
正直全部おまかせなので、大事なポイントの確認をするだけでOK
事前に決めておくポイントは、以下のとおりです。
・家賃をいくら値上げするのか?
・問い合わせ件数が明らかに少ない場合はどうするか?
いちばん良くないのは、問い合わせがないのにそのままの家賃で募集を続けてしまうケースです。
しばらく募集をしてみて問い合わせがなかった時は再相談する方向で募集を開始しました。
問い合わせ状況の確認をする
ちょうど真夏の閑散期だったのでお問い合わせは少ないことは予想していましたが、ぽつぽつとお問い合わせはあったので、そのまま継続。
ここは駅から2分の超駅近物件なので、内見しなくても契約されることがあります。
いったんは安心して募集を続けました。
しばらくして、管理会社の担当者から「決まりました!」との連絡が。
賃上げした家賃で制約することができました。
値上げ前の契約者の退去日:2023年7月27日
値上げ後の契約者の契約締結:2023年7月30日
値上げ後の契約者の入居日:2023年8月19日
やっぱりまた、内装前に契約を結ぶことができました!個人的には室内を見てから契約したいタイプなので、毎回ちょっとびっくりします。
とにかくよかった!!
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体験談:家賃の値上げ前後の利回りとキャッシュフローの変化は?
今回の家賃の値上げ時の状況を整理すると、以下のとおり。
・値上げ前の契約者は2023年7月27日に退去決定
・事前に退去届が届いたため2023年6月21日に管理会社と値上げ方針相談後、2000UPで決定。翌日より募集開始
・まだ値上げ前の契約者が住んでいるため、内見はできないが、数日に1件程度は問い合わせあり
・入居者の確定連絡が2023年7月29日にあり、2023年7月30日に契約締結
・値上げ後の契約者の入居日は、2023年8月19日に成約確定(空室期間は23日)
毎回空室期間は2週間から20日ぐらいなので、そんなに大きな変化はありませんでした。
多少成約までに時間がかかったとすれば、家賃の値上げが問題なのではなく、真夏の閑散期だったから。
自分の物件を見ていると、不動産賃貸業の閑散期は夏…!春は引っ越しの季節なので問い合わせ件数が大きく増えるイメージがあります。実際の契約書はこちらです。
家賃の値上げ前後のキャッシュフローの変化
月々の金額にすると2000円増えただけですが、年間にすると、24,000円になります。
2,000円×12か月=24,000円
家賃値上げ前 | 家賃値上げ後 | |
---|---|---|
家賃 | 65,000円 | 63,000円 |
共益費 | 5,000円 | 5,000円 |
合計 | 70,000円 | 68,000円 |
業務委託費 | 3,300円 | 3,300円 |
差し引き残高 | 66,700円 | 64,700円 |
不動産経営はほったらかしにする投資のひとつなので、毎月の収支が気が付かないうちに悪くなることも考えられます。
今回、初めて値上げに踏み切りましたが、値上げできるタイミングではしっかり値上げしておくべきだと学びました。
そういう意味では、空室は絶対悪ではありませんね。
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家賃の値上げに関するよくある質問
家賃の値上げに関するよくある質問を整理してみました!
家賃の値上げは一度にいくらまでできる?(上限金額)
家賃の値上げを拒否されたらどうする?
一つずつ見ていきましょう。
家賃の値上げは一度にいくらまでできる?(上限金額)
家賃の値上げには、特に法律上の上限金額はありません。
変な話、いくら上げてもいいし、いくら下げてもいいことになっています。
しかし、前述したように金額を変える時は、かならず「正当な理由」が必要です。
変更金額が大きいと借主が承諾する可能性は低くなりますし、関係が悪化すれば裁判になることも考えられます。
「正当な理由」は必須になります。
家賃の値上げを拒否されたらどうする?
入居者が家賃の値上げを拒否した場合、同額の賃料を払い続ければ、そのまま同じ部屋に住み続けることができます。
どうしても値上げが必要な場合にとれる方法は、以下のとおり。
1:入居者と粘り強く相談する
2:裁判で決着をつける
3:物件を売却する
通常は入居者と相談が続き、金額の交渉などをしてお互いが納得できる金額の変更に着地することが多いでしょう。
どうしても決着がつかない場合は裁判に持ち込むこともできますが、弁護士費用などのお金が別途かかる上に、賃料の値上げができたとしても、住人は退去する可能性が高くなります。
それらの手続きのわずらわしさから、どうしても利回りが良くなく、赤字になる場合などは、物件自体を売却するケースもあります。
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まとめ:家賃の値上げ5000円が難しい理由を解説!
今回は私の実体験から、家賃の値上げの成功例をご紹介しました。
現在所持している物件は、きちんと黒字経営ができているため、無理をしてまで値上げ交渉をする必要は感じていません。
しかし、物価高騰により、これから修繕費などが上がるリスクも考えられるため、相場環境が少しずつ変わってきた今のタイミングで家賃の値上げに踏み切りました。
家賃を値上げするタイミングには2つのパターンがあります。
①入居者との契約更新のとき
②入居者が退去して、次の入居者募集のとき
入居者が退去するタイミングは、不動産オーナー側から選ぶことはできないので、相場環境が変わってきた今、もし空室になるタイミングがあるようであれば、今一度賃料相場を調べてみることをおすすめします。
私の場合は、年間で約24000円のキャッシュフローを生み出すことに成功し、家賃の値上げに踏み切ってよかった!と感じています。
それでは今日もまめまめたのしい一日を。
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